中学1年生までは長編小説が好きでした
「長編小説が好きでした」と過去形で書きましたが、今でも長編小説は好きです。
ただ小学高学年から中学一年生くらいにかけて、育児猫は本を購入するときに本の厚みで選んでいました。
今はそんなことはしません。
当時は面白ければ面白いほど終わってしまうのが惜しく、長く読んでいたかったのでしょうか。
でも実際には長ければ長いほど面白い訳ではありませんね。
薄めたコーヒーがまずいのと同じで、意味のない文章でひたすら伸ばしたような小説もあるので、今思えば本を厚みで選んでいたのは間違いでした。
まぁでもあの頃の私は若かったというよりも幼かったので、致し方なかったと弁護しておきます。
星新一の『繁栄の花』
そんな「長ければ長いほどいい」と思い込んでいた中二病まっさかりの育児猫でしたが、国語の教科書で衝撃の作品に出会うのです。
それが星新一の『繁栄の花』
星新一さんと言えば日本を代表するSF作家であるのと同時に、ショートショートの名手ですね。
『繁栄の花』は「宇宙のあいさつ」という文庫本に収められています。
あらすじは
地球以外の星と交信を始めた地球人。
動植物の輸出によって生活している平和な星と交流を始める。
その星から「繁栄の花」という植物の種子が届く。
毒性はないかなどを調べて、地球人は慎重に育てる。
次々咲く花は季節ごとに見た目や香りを変え、瞬く間に地球の人を魅了する。
「繁栄の花」のあまりのすばらしさに地球人は、相手の了解を得ずに勝手に増やしてしまう。
多少の罪悪感はあったものの、相手の星には武力もないし、もめても大丈夫だろうと高をくくっていたのである。
ところがこの繁栄の花は思ったよりも丈夫。
というか、ほっといても枯れない。
というより、どんどん増殖する。
もともと地球に存在していた動植物の生態系を侵食してしまう。
地球人はなんとか「繁栄の花」を駆除しようとするが、うまくいかない。
何か枯らす薬なり道具なりがあるはずだ。
それがすごく高価だったとしても、地球の技術でまたこっそり複製すればいい。
そこで繁栄の花を送ってくれた星に恥を忍んで相談する。
相手は喜んでサンプルを送ってくるのだが・・・
オチはぜひ作品を読んでほしいです。
ショートショートの魅力
短いのに、見事なオチ。
ブラックユーモアというものに出会ったのも初めてだったと思います。
以前育児猫は貴志祐介さんのファンだという話を書きました。
貴志祐介さんの作品を読めば、登場人物の表情から声までまざまざと脳内で再生することが出来ます。
そういう緻密さが貴志祐介の魅力だと思います。
対して星新一さんの作品は、登場人物の顔どころか名前もない。
基本的にのっぺらぼうのイメージです。
それでも読んだ後に残る強烈なインパクト。
後味が悪いようで、それでいてニヤニヤしてしまう。
「こんなに短い作品でこれほど面白いなんて!」と感動しました。
文章は長ければいい訳ではないのだと、気づいた瞬間でした。
それ以来星新一の作品をむさぼるように読みました。
長編小説が嫌いになった訳ではないですが、短い作品にも手を出すようになったきっかけとなったのです。
名作に出会える国語の教科書
国語の教科書には非常に優れた作品が掲載されていることが多いです。
小学校の教科書で思い出すのは
「たぬきの糸車」
「ごんぎつね」
「やまなし」
「一つの花」
などでしょうか。
中学校の教科書だと
「繁栄の花」
「底なしの沼」(これも星新一)
「少年の日の思い出」
「夏の花」
「枕草子」
などを思い出します。
少年の日の思い出の、強烈な後悔の念も中三の私に強く刺さりましたねぇ。
意外と国語の教科書の内容を覚えている人が私の周りでは少ないのですが、目が覚めるような名作に出会えることもあります。
子どもたちもいつかそんな出会いを経験できるといいなぁ。
では今日はここまで。
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