不朽の名作「はだしのゲン」
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、頭の一部で常に戦争のことを考えている状態の育児猫。
3週間くらい前から、ほぼ毎週子供たちを連れていく図書館で、歴史のコーナーの一角においてある「はだしのゲン」が気になって気になって仕方ありませんでした。
3週間前は子どもたちの本だけで80冊ほど借りたので、諦めました。
2週間前、子供たちの本が50冊程度だったので、「はだしのゲン 全10巻」を借りて帰りました。
育児猫は小学生のころ「はだしのゲン」を読んだことがあります。
学校の図書館にある数少ない漫画本でしたから、我々世代で手に取ったこともないという人は少ないのではないでしょうか?
30年以上前の記憶をたどってみると、育児猫の「はだしのゲン」への正直な感想は「怖い」と「気持ち悪い」だったように思います。
もちろん、戦争はいけないというメッセージは十分受け取れましたが、それは「かわいそうなぞう」や「ちいちゃんのかげおくり」といったお話でもわかることでした。
子供のころに「はだしのゲン」を読んで、ほかの子供向けの戦争のお話と比べたときに、印象に残ったのは「怖さ」と「気持ち悪さ」だったのです。
はだしのゲンで一番印象に残っていた話
育児猫が小学生のころに「はだしのゲン」を読んだ記憶を振り返ると、最初に思い浮かべるのは「絵描きの政二さん」の場面です。
全身をピカ(作中で原爆のこと)で焼かれ、大やけどを負い、体中にウジが湧いた状態で放置されていた政二さん。
家族からも疎まれ、お金をもらって世話をするゲンとだけ心を通わせた人です。
ゲンが懸命にお世話をするけれど、結局原爆症なのかやけどが原因なのかはっきりわかりませんでしたが、死んでしまいます。
体中にたかったウジとハエ。
包帯を取った時の見た目。
通夜に棺桶から這い出して来るシーン。
などなど、、すごくインパクトが強くて、はっきり覚えていました。
ただ「政二さん」以外ではっきり名前を覚えていた登場人物は「ゲン」と「隆太」位で、ストーリーも最終的にはゲンが独りぼっちになったことを思い出せるのみでした。
はだしのゲンを30年ぶりに読んでみて
30年以上ぶりに「はだしのゲン」読んでみて、育児猫が感じたことは「これは家族愛がテーマの漫画だったんだな」ということです。
興味を持った方にはぜひ読んでいただきたいので、ざっくりとしか説明しませんが、物語は主人公の「中岡元」が1945年太平洋戦争末期に広島に暮らしているところから始まります。
家族は父、母、兄が二人、姉が一人、弟が一人。兄のうち一人は疎開していて一緒には暮らしていません。
ゲンは小学(国民学校)二年生。
父親は反戦意識が強く、そのため日頃から中岡家は肩身の狭い思いをしています。
それでも家族で支え合って、なんとか生き抜こうとしていた1945年8月6日、原爆が投下されるのです。
原爆の爆発で家がつぶれ、ゲンと母親の目の前で父親と姉と弟が焼死します。
その光景をみた母は正気を失いますが、なんとか近所に住んでいた朝鮮の人に手伝ってもらって安全な場所にゲンと母は非難します。
母は妊娠中で、原爆のショックで出産します。
お金を稼ぐために、ゲンは政二さんの世話をしたり、母も兄もいろいろな努力をしますが、赤ちゃんは栄養失調のため1歳で他界します。
弟によく似た「隆太」や姉に似ていて顔にやけどの跡が残る「夏江」など、家族以外にも仲間ができますが、仲間のほとんどが原爆の影響で亡くなっていきます。
やはり原爆症です。
兄とも仲間とも別れ別れになり、最終的にゲンが東京を目指して出発するところで話は終わっていました。
久しぶりに読んでいろいろ驚いたのですが、一番の驚きは
「これほど声高に天皇や軍人、また原爆を投下したアメリカを非難していたのだな」ということです。
この作品が書かれたのは1970年代だそうですから、アメリカに頭が上がらなかった時代ですし(今もそうですが)、昭和天皇の在位期間でしたから、なかなかにすごいことだなぁと感じました。
そして、体罰が愛情表現として描かれているシーンが多い。
実際当時はそうだったのでしょうね。
育児猫の個人的な意見ですが、体罰がしつけという愛情表現として機能するのは、子供が「自分は絶対に親に愛されている」という自信がある場合のみです。
ゲンの両親は、子供に食べさせるため夫婦が夜なべで内職したり、自分は食べずとも子供たちに何とか食べさせて、栄養失調で倒れるなどのシーンが何度もあり、愛されていることを疑う余地はなかったのでしょう。
とはいえもちろん、育児猫は体罰反対でありますよ。
思っていたほど、絵が気持ち悪かったりすることはありませんでした。
これは「進撃の巨人」とか読んで慣れてきたせいかもしれませんね。
とにかく作品全体に「なんとか家族を支えたい、助けたい」と思うゲンの気持ちが強く表れていて、心を打たれました。
ゲンの母に感情移入する
子供の時は主人公「ゲン」に感情移入して読んでいましたが、今読むとゲンの母親に感情移入してしまいました。
疎開に我が子を出す辛さ。
軍隊に我が子を差し出す痛み。
目の前で我が子と旦那が焼かれていくのに、なすすべのない無力感。
出産してしまうのに、栄養不足で母乳が出ない絶望。
1歳というかわいい盛りの赤ちゃんを栄養失調で死なせてしまう悲しみ。
まだ親が必要な年齢の子供を遺して、死を覚悟する気持ち。
どれ1つとっても耐えられそうにないんですけど、戦中戦後の日本人はこういう壮絶な痛みを乗り越えたんだなぁと圧倒されました。
はだしのゲンについて、もう少し語りたいことがあるのですが、思いのほか長くなってしまったので、残りはまた次の記事で書きたいと思います。
では今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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