アンパンマン、お願いがあるのです
この数十年。幼児たちから絶大な人気を誇るアンパンマン。
あなたに育児猫はどうしても言いたいことがあるのです。
それは「暴力では何も解決しないのですよ」ということ。
今まで何度も何度も戦ってきた宿敵ばいきんまん。
彼と腹を割って話したことはありますか?
なぜあんな意地悪なことをしてしまうのか、理解しようとしたことはありますか?
ばいきんまんは「アンパンマンと戦うことが生きがい」なんだそうですよ。
あなたと戦うことでしか、彼は自分の存在意義を見出せないのです。
もしかしたら二人で格闘技でもしたら、ばいきんまんの心は満たされるかもしれませんね。
いや格闘技ではなくとも、トランプなどの勝ち負けがつく勝負をするだけでもばいきんまんは落ち着くかもしれませんよ?
あなたは正義の味方なんですから、みんなのために、上手にわざと負けてあげるのも一興ではないですか?
私の見る限り、
アニメでのあなたの活躍は
・ばいきんまんがいたずらする
→みんなが困る
→アンパンマンが奇跡的に復活
→アンパンマンがアンパ~ンチなどでばいきんまんを吹っ飛ばしてめでたしめでたし。
というパターンがほとんどだと思います。
ばいきんまんのいたずらが、「アンパンマンに構ってほしいから」という理由で行われているとしたら、先に構ってあげることで争いは未然に防げるはずです。
テレビのしかも15分で一話という限られた時間内で、子供たちにわかりやすい話にしたいという気持ちは分かるのですが、あなたは子供たちのヒーローなのですから、暴力以外の解決法も今一度模索してほしいと切に願います。
アンパンマンの原作はおじさん
もともとアンパンマンの原作第一弾は1969年にやなせたかしさんが書いた大人向けのお話。
「十二の真珠」の一作として掲載されています。
初期のアンパンマンはなんとおじさんです。
人なのです。
このおじさんが戦後おなかをすかせた子供たちにアンパンを配り続けるというお話。
これがアンパンマンの原型だと言われています。
空を飛ぶ能力だけはありますが、アンパンチもありませんし、顔をちぎることもありません。
焼け焦げたマントと普通のおじさんという取り合わせ。
カッコ悪いヒーローを描こうとしたと、後年やなせたかしさんは語っておられます。
次が1973年発売、キンダーお話絵本の「あんぱんまん」
こちらは見たことある人も多いかもしれませんね。
このときもばいきんまんはまだ登場しません。
あんぱんまんにはまだ人間らしさが残っていますし、戦うこともありません。
この絵本はあんぱんまんがヒーローと呼ぶにはあまりにもみすぼらしく、絵本の評論家や幼児教育関係者などから酷評されたという過去があります。
ところが3~5歳の子供たちから熱烈な支持を受けたそうです。
この絵本の人気がアンパンマンの今の地位に繋がっているのです。
暴力シーンなどなくても、あんぱんまんは子供たちのヒーローだったのです。
やなせたかしさんは戦争経験者です。
弟さんを戦争で失くしてもおられます。
壮絶な従軍経験から飢えほど不幸なことはないと考えたそうです。
ところが人気のあるヒーローは戦うばかりで、人を本当の意味で助けることはない。
戦う理由もよくわからない。
だからアンパンマンを作ったのだそうです。
本当のヒーローはかっこよくはなく、飢えている人に恥ずかしそうに、そっと食料を配る。
そして正義を行うということはきれいごとではなく、人に与えると自分は傷つくのだということを表現したくて、アンパンマンの顔が減るとアンパンマンの元気がなくなるという設定にしたのだそうです。
ここら辺のやなせたかしさんの心中を知りたい方は
こちらの本で詳しく語っておられます。
調べたところ、以前テレビで語っておられたこともあるそうなので、やなせたかしさんのアンパンマンへ込めた願いはご存じの方も多いかと思います。
今のアンパンマンは原作と違いすぎる
原作者の意図とも大きく外れているし、子供達だってもともと優しいアンパンマンがすきだったのに、暴力的なアンパンマンになったのはなぜなのでしょうね。
おそらくテレビ局側の都合なんだと思います。
幼い子供が飽きないように、30分の枠を2つに分け、ドラマティックにするため悪役が毎回登場(絵本でばいきんまんが登場するのは1979年が初めて。その後ずっとでているわけではありません。)。
ただアンパンマンが勝つだけでは面白くないから、一度はピンチにしておいて、話し合ったり、駆け引きする暇はなく、暴力で解決。
でもこういう考え方って、そもそも「子供にはどうせ難しいことは理解できないだろう」という大人の間違った決めつけが根底にあると思います。
子供という存在を下に見ているのです。
派手な音楽をかけて、カラフルでかわいいキャラクターをたくさん作って、わかりやすい悪役を倒しておけばOKみたいな、非常に短絡的な思考を感じます。
やなせたかしさんがアニメのアンパンマンの暴力行為について語られたことはないと思いますが(私の知る限り)、おそらく複雑な胸中だったと思います。
アンパンチの弊害
育児猫家ではそもそも6歳になるまでテレビを見せていません。
それでもアンパンマンは町中にあふれており、子供たちは全員3歳にもなればアンパンマンを知っていました。
しかし内容までは知りませんでしたし(絵本の2代目アンパンマンは読んであげたことがあります)、特にアンパンマンに夢中になることはありませんでした。
幼稚園ではお友達同士でアンパンマンごっこをしたりもしているようですが、育児猫の子供たちはあまり参加したことはないそう。
ところが先日、長女が手袋を2枚重ねて手にはめて、「アンパンマンみたい」と旦那に見せました。
育児猫も旦那も「本当だね」と笑っていたのですが
旦那が何を思ったのか「お母さんにアンパ~ンチ」と言ったのです。
すると長女が何のためらいもなく、育児猫のおなかに全力でパンチ。
それほど痛かったわけではなかったのですが、育児猫は子供から意図的に打ったり蹴ったりされたことがなかったので衝撃を受けました。
育児猫の顔が怖かったのでしょうか。
旦那はあわてて長女に
「お母さんにごめんなさいって言って」
長女はすぐに「お母さんごめんなさい」と言ってくれました。
が、しかし。
育児猫は旦那に
「いや、謝るのは長女ちゃんじゃないでしょ?」と突っ込みました。
「あ、ごめんなさい」
そう。悪いのはお前だ!!!
長女は旦那が言ってるんだし、アンパンチならいいのだろうと考えたのだと思います。
この後すぐに育児猫は長女と目線を合わせて
「どんな理由でも人を殴ったらいけない。アンパンチは人を殴ってもいい合図ではない」としっかり伝えました。
真剣にうなずいてくれたので、伝わったと思います。
アンパンチならしてもいいと思っている子供いますよね?
だってみんなのヒーローで正義の味方のアンパンマンがするんだもん。
ちょっと意地悪なくらいで、空のかなたに飛んでいくくらいの勢いでパンチしていいんだもん。
こんな風に子供が感じているような気がします。
アンパンチじゃなくても、悪い奴がいたらぶっ飛ばしていいと、子供が学んでいるかもしれません。
原作のアンパンマンは素晴らしいけれど、アニメは・・・
テレビはしょせん営利目的の企業です。
子供向けの番組でも、子供の健やかな成長を願って作られているとは限りません。
少なくともアンパンマンは様々な意味で間違っていると、私は感じています。
アンパンマンを見た子がみんな暴力的になるわけではないでしょう。
でも『暴力で解決することもある』ということを学ぶのは間違いないでしょう。
原作者のやなせたかしさんは、2013年に他界されております。
彼の遺志を、もっと大切に考える人にアニメを作ってほしいなと思います。
では今日はここまで。
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